スキンケアにおける「ターンオーバー」とは、肌の細胞が一定の周期で生まれ変わる新陳代謝の仕組みを指します。
表皮では、基底層で生まれた細胞が角質細胞となって肌表面に押し上げられ、最終的には垢となって自然に剥がれ落ちていくというプロセスが繰り返されています。
このターンオーバーは、健康な肌であれば約28日周期で行われます。しかし、加齢、日焼け、睡眠不足、栄養不足、ストレスなどの要因によって、その周期は遅延または過剰になりがちです。
サイクルが遅くなると:古い角質が溜まり、くすみ、毛穴詰まり、ニキビ、ざらつきの原因に、サイクルが早まりすぎると:未成熟な細胞が表面化し、乾燥、バリア機能の低下、赤みや刺激反応を招く恐れがあります。
ターンオーバーを整えるには、内的(生活習慣)と外的(スキンケア)アプローチの両立が必要です。どちらも極めて重要な要素です。
◆美容家が選ぶターンオーバー調整に有効な成分
▶ レチノール(ビタミンA誘導体)
分類:ビタミン系成分(脂溶性)
作用:ターンオーバー促進、コラーゲン生成、しわ改善
レチノールは、加齢によって遅延しがちなターンオーバーを「内側から自然な周期に戻す」働きを持つ成分です。肌の生まれ変わりを促進することで、小じわ、毛穴、ハリ低下、くすみといった複合的な悩みにアプローチします。
📌 注意点:
刺激が強く出やすいため、低濃度のものから、徐々に使用してことが推奨されます。
▶ AHA(フルーツ酸:グリコール酸・乳酸など)
分類:水溶性の角質ケア成分
作用:角質除去、肌の滑らかさ改善、くすみ緩和
AHAは、ターンオーバーが遅延して角質肥厚が進んでいる肌に対して、表面の不要な角質を優しく剥離することで、正常な代謝をサポートします。
ざらつき、色むら、ニキビ後の肌トーンに悩む方に効果的です。
📌 使用のコツ:
週に2〜3回から始めます。保湿と紫外線対策がセットで行えます。
▶ PHA(グルコノラクトンなどの穏やかな角質ケア成分)
分類:AHAの進化型(高分子)
作用:マイルドな角質除去、保湿、肌バリアの維持
PHAは、AHAと同様に角質ケア効果を持ちながら、分子量が大きく、肌への刺激が少ないことが特長です。敏感肌・乾燥肌でも使用しやすい角質ケア成分として注目されており、ターンオーバーの整肌としても効果的です。
📌 推奨用途:
週1〜2回のマイルドピーリングや、毎日の保湿美容液に配合された低濃度処方のものから使用します。
◆ 成分選びでターンオーバーはコントロールできる
成分名 | 主な作用 | 向いている肌タイプ | 使用の注意点 |
---|---|---|---|
レチノール | ターンオーバー促進、しわ改善 | 年齢肌、毛穴、くすみ肌 | 低濃度から導入、夜使用推奨 |
AHA | 角質除去、肌表面の滑らかさ | ざらつき、くすみ、脂性肌 | 紫外線対策・保湿必須 |
PHA | マイルドな角質ケア+保湿サポート | 敏感肌、乾燥肌、ゆらぎ肌 | 頻度と濃度を肌に合わせて調整 |
◆ 総括:再生リズムを味方にする、知的スキンケアのすすめ
ターンオーバーの乱れは、多くの肌トラブルの“起点”となります。だからこそ、肌を根本から整えるには、この再生サイクルが重要です。
肌を剥がすのではなく、古い角質を取り除き、新しい肌を「育てる」ケア
強い刺激ではなく、優しいケアで肌を「整える」成分配合の化粧品選び
急激な肌の変化より、継続的な「肌強化」
これらを意識しながら、肌にとって最適な周期を保てるようなスキンケア戦略を設計することを、美容家の視点から推奨します。
日々変化する肌と向き合いながら、美容成分の力を借りて肌を再生させる、これこそが、素肌美を育てるアプローチです。