原文:如切如磋、如琢如磨
「如切如磋、如琢如磨」という言葉は、「人は完成しきることはなく、磨き続けることで価値が高まる」という意味を持っています。
これは修行僧や学者のための言葉ではなく、美容室という現場そのものに当てはまる考え方です。
美容室の仕事は、一度覚えたら終わりではありません。
カット、接客、気配り、言葉遣い、空気感、すべてが少しずつ更新され続ける仕事です。
昨日できたことが、今日も同じ価値を持つとは限らない世界に私たちは立っています。
1. 「できるようになった=終わり」ではない
多くのスタッフがつまずくポイントは、「一通りできるようになった時」です。
カットが安定してきた、指名が少しずつ増えた、クレームも減った。
この段階で成長が止まる人が多くなります。
しかし本来、ここがスタートです。
- カットが安定したなら、スピードと再現性を磨く
- 指名が増えたなら、なぜ選ばれているかを言語化する
- クレームが減ったなら、満足の基準を一段上げる
「できるようになったか」ではなく、
「昨日より少し良くなったか」を基準にすることが、切磋琢磨の第一歩です。
2. 経営者が示すべき「磨き続ける姿勢」
スタッフは、言葉よりも経営者の姿勢を見ています。
・オーナーは学びを止めていないか
・接客や言葉遣いを雑にしていないか
・「昔はこうだった」という話ばかりしていないか
経営者自身が「自分はもう完成している」という空気を出した瞬間、
サロン全体の成長は止まります。
反対に、
- 新しい考え方を取り入れている
- 若いスタッフの意見を一度受け止めている
- 自分の言動を振り返って修正している
この姿を見せるだけで、
「この店では成長し続けていい」という安心感が生まれます。
3. 切磋琢磨は競争ではなく「磨き合い」
切磋琢磨という言葉は、競争や比較と誤解されがちです。
しかし美容室において重要なのは、勝ち負けではありません。
・先輩が後輩を引き上げる
・後輩が先輩に新しい視点をもたらす
・互いの良い部分を盗み合う
この循環が生まれているサロンは、空気が柔らかく、離職が少なくなります。
具体的には、
- 月に一度「最近よかった接客」を共有する
- 技術ではなく「気づき」を話す時間をつくる
- ダメ出しより「なぜうまくいったか」を言葉にする
これだけで、磨き合う文化は育ちます。
4. 顧客満足は「完成度」ではなく「進化感」
お客様が感じている満足は、
「完璧だから」ではなく「成長しているから」生まれます。
・前回より扱いやすくなった
・前より話を聞いてくれた
・自分の好みを覚えてくれていた
こうした小さな進化が、信頼につながります。
そのためにスタッフに伝えるべきことは一つです。
「完璧を目指さなくていい。
昨日より一つ良くなれば、それで十分」
この言葉があるだけで、
失敗を恐れず、挑戦する空気が生まれます。
5. 明日から使えるアクションプラン
最後に、明日から実行できる具体策をまとめます。
① 朝礼での一言ルール
「昨日より良くしたこと」を一人一つ共有する
② 月1回の振り返りテーマ
売上ではなく「成長した行動」を振り返る
③ 経営者自身の宣言
「自分もまだ磨いている途中だ」と言葉にして伝える
④ 比較をやめる言葉選び
「誰より上」ではなく「前より良い」を使う
「如切如磋、如琢如磨」とは、
特別な才能を持つ人のための言葉ではありません。
毎日サロンに立ち、少しずつ良くなろうとする人すべての言葉です。
磨くことをやめないサロンには、
人が育ち、信頼が積み重なり、結果として数字がついてきます。
完成を目指さず、成長を続ける。
それこそが、美容室経営における最大の強みです。



