相手の嫌がることはしない(ホスピタリティの原点)

原文:己所不欲、勿施於人

「自分がされて嫌なことは、他人にもしない。」
この言葉はとてもシンプルですが、美容室経営においては最も重要な原則の一つです。

技術やメニュー、価格設定よりも先に、
人としてどう振る舞うかが、サロンの価値を決めています。

1. ホスピタリティは「特別なこと」ではない

多くのサロンが、
「おもてなし」「ホスピタリティ」という言葉を掲げます。
しかし現場で大切なのは、難しいことではありません。

・急かされるのは嫌
・上から目線で話されるのは嫌
・話を聞いてもらえないのは嫌

この「当たり前の感覚」を忘れないことが、
すべての出発点です。

特別な演出や丁寧すぎる言葉よりも、
嫌なことをしないという姿勢のほうが、
お客様には深く伝わります。

2. お客様が「言わない不満」に気づけているか

お客様は、ほとんどの場合、
不満を口にしません。

・本当は静かに過ごしたかった
・今日は話しかけてほしくなかった
・仕上がりについて少し違和感があった

こうした気持ちは、
次に来店しないという形で表れます。

だからこそ大切なのは、
「喜ばせよう」とする前に、
嫌な思いをさせていないかを考えることです。

3. スタッフ育成にも同じ原則が当てはまる

この論語は、スタッフとの関係にもそのまま使えます。

・人前で叱られるのは嫌
・理由もなく否定されるのは嫌
・忙しい時に感情をぶつけられるのは嫌

経営者や先輩が無意識にしている行動が、
スタッフのやる気を削いでいることは少なくありません。

「指導だから仕方ない」
「成長のためだから」

そう思った瞬間に、
相手の気持ちが見えなくなります。

4. 基準は「自分ならどう感じるか」

良いサロンかどうかを決める基準は、
マニュアルではありません。

「これをされたら、自分はどう感じるか?」

この問いを、
接客・指導・言葉選びの前に
一瞬だけ挟むこと。

それだけで、多くのトラブルは防げます。

・忙しいからと雑に扱われたらどうか
・不安な状態で放置されたらどうか
・否定から入られたらどうか

経営者自身がこの基準を持っているかどうかで、
サロンの空気は大きく変わります。

5. 「嫌がることをしない」サロンは信頼が残る

お客様は、
完璧な技術やトークを求めているわけではありません。

・安心できる
・尊重されている
・無理をさせられない

この感覚があるサロンに、人は戻ってきます。

同じことはスタッフにも言えます。

・無理を強いられない
・人格を否定されない
・安心して失敗できる

この環境があるからこそ、
人は成長し、長く働きます。

6. 明日から使えるアクションプラン

① 接客前の一呼吸
「これをされたら自分は嫌か?」を心の中で確認する

② 指導の場を選ぶ
注意は人前でせず、必ず個別に行う

③ 声のトーンを意識する
忙しい時ほど、低くゆっくり話す

④ 経営者自身の振り返り
1日の終わりに「今日、嫌な思いをさせなかったか」を考える

「己所不欲、勿施於人」とは、
優しくすることではありません。
相手の立場に立ち続ける覚悟のことです。

この原則が守られているサロンでは、
クレームが減り、空気が穏やかになり、
結果として売上も安定します。

ホスピタリティの原点は、
何かを“してあげる”ことではなく、
余計なことをしないこと

その積み重ねが、
信頼され続ける美容室をつくります。

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